要点
- AirTrunkは10月27日、西シドニーのハンティングウッドにある400MWのキャンパス「SYD3」向けに、42.5億豪ドル(約30億米ドル)のグリーンローンを締結した。貸し手は32機関で、完成は2028年半ばの予定(AirTrunk、Mingtiandi)。
- 同日、STTGDCは印西市にある70.8MWの東京キャンパスのフィットアウトと運営に充てる930億円のグリーンローンを締結した。リードコーディネーターはスタンダードチャータード(STTGDC)。
- 債務額は1MW当たりシドニーで約750万米ドル、東京で約830万米ドルとなる。これに対し、中位の建設コストは1MW当たりそれぞれ1,000万米ドル、1,600万米ドル(当社試算、Cushman & Wakefield)。
- この債務の基礎となる政策金利は、9月の利上げ後、オーストラリアで4.60%、日本で1.25%(RBA、日本銀行)。この金利水準では、銀行マージンを除いた基礎コストだけで1MW当たり年間約34万5,000米ドル(シドニー)、10万4,000米ドル(東京)となる(当社試算)。
- 日本銀行は10月30日、オーストラリア準備銀行は11月3日に次回の金融政策決定を発表する。
アジア太平洋地域のAIデータセンターのコストは、いまや建設会社と同じくらい銀行によって決まるようになっている。10月27日、2社の事業者が同じ日にグリーンローンを締結した。AirTrunkは西シドニーの400MWの単一キャンパスに42.5億豪ドルを、STTGDCは東京郊外の70.8MWのキャンパスに930億円を調達した。1MW当たりに換算すると、貸し手は容量1MWごとに750万~830万米ドルの融資を行っていることになる。
なぜ今なのか。両ローンとも、両国の中央銀行が9月に利上げした後に締結され、次回の政策決定の数日前に成立した。日本銀行は10月30日、オーストラリア準備銀行は11月3日に決定を発表する。開発事業者にとって、この規模の融資では0.25ポイントの金利変動はもはや誤差ではない。SYD3だけで年間約1,060万豪ドルに相当する(当社試算)。
10月27日に締結された内容
AirTrunk、シドニー。AirTrunkは、西シドニーのSYD3開発向けに42.5億豪ドルのグリーンローンを確保したと発表した。国内外の32機関が参加した。14行の主幹事銀行がファシリティを引き受け、その中にはサンタンデール銀行、BNPパリバ、DBS、ドイツ銀行、ING、みずほ、MUFG、ナショナル・オーストラリア銀行、カナダロイヤル銀行が含まれ、SMBC、HSBC、UOBがグリーンローン・コーディネーターを務める。A W Edwardsが主導する建設はすでに進行中で、完成は2028年半ばの見込み。グリーン条件の達成によるマージン削減分は、AirTrunkの社会貢献プログラムに充てられる。同社は期間や金利条件を開示していない。
発表ではSYD3の容量は示されていない。Mingtiandiの報道によると、シドニー中心部から西に約30kmのハンティングウッドにある400MWのキャンパスで、融資額は約30億米ドル。このファシリティは、AirTrunkが6月に銀行と協議していると報じられた5年・43億豪ドルの融資をわずかに下回った(当時のThe Next Webの報道)。AirTrunkのコミット済み債務は世界全体で約384億豪ドル(約269億米ドル)に達し、そのうち198億豪ドル超がオーストラリア向けである。同国では容量1.2GW超の5つのキャンパスを運営している。
選別が一段と厳しくなる資本市場における「質への逃避」だ
STTGDC、東京。ST Telemedia Global Data Centresは、印西市のグッドマン・ビジネスパークにある同社キャンパスの2棟、STTGDC TYO1とTYO2のフィットアウトと運営資金として、930億円のグリーンローン・ファシリティを確保したと発表した。キャンパスのIT容量は合計70.8MW。スタンダードチャータードがリードコーディネーター兼グリーンローン・コーディネーター、ソシエテ・ジェネラルがグリーンローン・コーディネーターを務め、みずほ、OCBC、UOBが貸し手として参加する。融資は、建物が合意されたグリーン認証を取得し、設計上の電力使用効率(PUE)1.3以下を達成することが条件となっている。
この構造はコスト比較にとって重要だ。グッドマンがシェル&コア(躯体と基本設備)を開発して建物をSTTGDCに長期賃貸し、STTGDCがフィットアウトと運営を担う。1棟目の開業時にMingtiandiが報じたとおりである。したがって930億円は主に電力、冷却、内装設備に充てられ、土地や躯体には使われない。
今回の資金調達は、当社の日本事業基盤の強さと、取引銀行の皆様からの信頼を反映したものです
1MWのコストと、そのうち貸し手が負担する割合
当社試算:42.5億豪ドルを400MWで割ると、SYD3の債務は1MW当たり約1,060万豪ドル、すなわち750万米ドルとなる。930億円を70.8MWで割ると1MW当たり約13.1億円、1米ドル=158円換算で約830万米ドルとなる。
これを建設コストと比較する。Cushman & Wakefieldの2026年版アジア太平洋建設コストガイドは、中位仕様の建設コストの中位値を、オーストラリアで1MW当たり1,000万米ドル、域内で最も高い日本で1,600万米ドルとしていると、同社が4月1日に発表した。日本のコストは1年で20.9%、オーストラリアは3.8%上昇した。

この数字に基づくと、シドニーの融資はオーストラリアの中位建設コストの約75%、東京の融資は日本の中位建設コストの約52%をカバーする(当社試算)。ただし、2つの比率は同列には比較できない。SYD3はゼロから建設するハイパースケールキャンパスである一方、STTGDCはシェルをグッドマンから賃借しているため、フィットアウト向け融資が建設コスト全体に占める割合は小さくなるはずだ。それでもこの差は、日本のコスト割高分のどれほどが建物そのものにあるかを示している。
より大きいのは内部に収まる設備の金額だ。DC Market Insightsは、世界のAIデータセンター市場を2025年に3,901.9億米ドル、導入済みAI ITロード9.04GWと評価しており、サーバー、アクセラレーター、ネットワーク機器を含めると1MW当たり約4,300万米ドルとなる(当社試算)。これに基づくと、今回の2件の施設向け債務は、AI用1MWの総コストの約17~19%にすぎない。残り(大半はチップ)はテナントが負担する。
| 項目 | シドニー(SYD3) | 東京(STTGDC TYO1 + TYO2) |
|---|---|---|
| 融資額 | 42.5億豪ドル(約30億米ドル) | 930億円(約5.9億米ドル) |
| 容量 | 400MW | IT容量70.8MW |
| 1MW当たり債務額 | 1,060万豪ドル(約750万米ドル) | 13.1億円(約830万米ドル) |
| 1MW当たり中位建設コスト(C&W 2026) | 1,000万米ドル(オーストラリア) | 1,600万米ドル(日本) |
| 中位建設コストに占める債務の割合 | 約75% | 約52%(フィットアウトのみ、シェルはグッドマン所有) |
| グリーン条件 | マージン調整付きグリーンローン | グリーン認証、設計PUE 1.3以下 |
| 時期 | 2028年半ばに完成予定 | TYO1は開業済み、TYO2は2027年初めに予定 |
出所:AirTrunkおよびSTTGDCの発表(2026年10月27日)、Mingtiandi(SYD3の400MW、30億米ドル)、Cushman & Wakefield(2026年4月1日)。当社試算。円は10月中旬の水準である1米ドル=158円で換算しており、米ドル建ての数値は為替レートにより変動する。SYD3の容量はAirTrunkの発表ではなくMingtiandiによる。建設コストは中位仕様の建設における国別の中位値であり、この2拠点のコストではない。
債務の基礎となる金利
両中央銀行はいずれも9月に動いた。オーストラリア準備銀行は9月29日にキャッシュレート目標を25ベーシスポイント引き上げて4.60%とし、「必要であればキャッシュレート目標のさらなる引き上げを含め」、必要な措置を取り続けると声明で述べた。日本銀行は無担保コールレート(オーバーナイト物)の誘導目標を1.0%程度から1.25%程度へ7対2の賛成多数で引き上げ、9月24日から適用したことが公表文で示された。1月時点の日本の政策金利は0.75%だった。
データセンターのプロジェクトローンは通常、変動金利の指標金利に銀行マージンを上乗せして価格設定されるが、両社ともマージンやヘッジの内容を開示していない。したがって以下の数字は下限であり、実際の利払い額ではない。現在の政策金利に基づく当社試算:SYD3の42.5億豪ドルには年間約1億9,600万豪ドル、1MW当たり約34万5,000米ドルの基礎金利コストがかかる。STTGDCの930億円には年間約11.6億円、1MW当たり約10万4,000米ドルがかかる。さらに0.25ポイント利上げされると、SYD3では年間約1,060万豪ドル、東京キャンパスでは年間約2億3,300万円が上乗せされる。

重要なのは2つの市場の差である。日本は域内で最も高いコストで建設するが、最も低い金利で借り入れる。オーストラリアは建設コストが低いものの、基礎金利は4倍近い。当社の試算では、シドニーの1MWは必要な債務が少ないにもかかわらず、東京の1MWよりも年間約24万米ドル多い基礎金利コストを負担する。日本の銀行は両案件に参加しており、みずほは両キャンパスに融資し、SMBCとMUFGはSYD3の主幹事銀行に名を連ねる。
技術:グリーン条件が求めるもの
グリーン条件は、建物の冷却と電力供給の方法に関するものだ。STTGDCによると、TYO1は年間PUE 1.25未満を目指して設計され、通常運転時に継続的な水使用のないクローズドループ冷却を採用している。一方TYO2は、液冷への対応を備えた高密度AIワークロード向けに建設されている。融資自体の基準は設計PUE 1.3以下だ。AirTrunkが7月に締結した23.25億米ドルのジョホール向け融資では、設計PUEを1.37に設定したとAirTrunkは発表している。
液冷は、いま貸し手が資金を出しているコスト要因だ。日本の機器メーカーはハードウェアの量産体制を拡大している。ニデックは10月12~15日のOCP Global Summitで、800VDC入力に対応した3.2MWのインロー型冷却液分配ユニット(CDU)を披露した。同社製品群で最大のもので、2027年上半期の量産開始を目指すとニデックは発表した。Cushman & Wakefieldも、域内のコスト上昇を同じ変化に結び付けている。
高性能ハードウェアは世代が進むごとに、より多くの電力、より多くの冷却、そしてより高い構造的耐性を必要としています。
より広い流れ:単一資産向け融資が相次いだ1年
10月27日の2件は、今年域内で相次いだ単一キャンパス向け大型融資の締めくくりとなる。AirTrunkだけで4件を締結した。3月に東京のTOK1向けに1,916億円(12.4億米ドル)(AirTrunk発表)、7月にジョホールのJHB2向けに約30の貸し手から23.25億米ドル(国際金融公社〈IFC〉との初の案件)、今月TOK1向けに追加で10億米ドルのグリーンローン(Mingtiandi報道)、そして今回のSYD3である。STTGDCの東京向け融資を加えると、2026年に3カ国で締結された単一資産のデータセンター向け債務は約82億米ドルとなる(当社試算)。
| 日付(2026年) | 借り手とキャンパス | 融資額 | 米ドル換算 |
|---|---|---|---|
| 3月 | AirTrunk TOK1、東京 | 1,916億円 | 12.4億米ドル |
| 7月 | AirTrunk JHB2、ジョホール | 23.25億米ドル(95億リンギット) | 23.25億米ドル |
| 10月 | AirTrunk TOK1、東京(追加グリーンローン) | 約10億米ドル | 10億米ドル |
| 10月27日 | AirTrunk SYD3、シドニー | 42.5億豪ドル | 約30億米ドル |
| 10月27日 | STTGDC TYO1 + TYO2、東京 | 930億円 | 約5.9億米ドル |
| 合計 | 約82億米ドル | ||
出所:AirTrunkの発表(2026年3月、7月、10月27日)、STTGDCの発表(2026年10月27日)、Mingtiandi(10月のTOK1融資、米ドル換算額)。10月のTOK1融資はMingtiandiの報道によるもので、当社が確認したAirTrunkの発表では裏付けられていない。当社試算。合計はプロジェクトコストではなく融資額を合算したもので、STTGDCの円建て額は1米ドル=158円で換算。
規模がすべてを物語る。SYD3の30億米ドルの融資は、DC Market Insightsが推計する2025年通年のオーストラリアのデータセンターインフラ支出58.1億米ドルの約半分に相当する(当社試算)。貸し手は選別もしている。AirTrunk自身のシンガポールREIT上場は、当社が10月21日に報じたとおり、投資家がより高い利回りを求めたことで延期され、NEXTDCはメルボルンでの電力供給の遅れを受けて業績見通しを引き下げた。銀行は既存の大手事業者が運営する契約済みの大規模キャンパスを支援しており、株式市場はより厳しい問いを投げかけている。
事業者、投資家、ベンダーにとっての意味
上記の数値に基づく当社の見解:
- 施設向け債務は1MW当たり750万~830万米ドルを想定する。これはシドニーや東京の契約済み大規模キャンパスにおける現在の市場水準であり、中位建設コストの全額ではなく50~75%をカバーするものと見込むべきだ。
- オーストラリアの案件には金利の先行きを織り込む。SYD3のレバレッジでは、0.25ポイントの利上げごとに1MW当たり年間約1万9,000米ドルが上乗せされる。4.60%では、マージンを除いた基礎金利だけで1MW当たり年間約34万5,000米ドルとなる。
- 資産が許す限り円建て債務を活用する。9月の利上げ後でも、日本の基礎金利1.25%では、830万米ドルの債務に対するコストは1MW当たり年間約10万4,000米ドルで、シドニーの3分の1未満にとどまる。
- 融資のPUE基準に合わせて設計する。設計PUE 1.3以下(東京)や1.37(ジョホール)といったグリーン条件が標準になりつつあり、これを満たさない設計はマージン割引を失う可能性がある。
- ベンダー:液冷機器は債務で賄われるようになった。東京キャンパスには液冷への対応が組み込まれており、3.2MW級のCDUは2027年上半期に量産段階に入る。
- 投資家:シェルとチップを切り分けて考える。施設向け債務は、IT機器を含めたAI用1MWのコスト約4,300万米ドルの約17~19%にすぎず(当社試算)、建物よりもテナントの信用力の方が重要となる。
市場規模については、当社のオーストラリア データセンターインフラ市場レポート、2025年の市場規模を9億2,459万米ドルと評価するオーストラリア AIデータセンター市場レポート、そしてAI用1MW当たりのコストについては世界のAIデータセンター市場レポートをご覧ください。取引についてはディールトラッカーを、上記市場の電力規制については日本の電力・政策ページとマレーシアの電力・政策ページをご覧ください。
今後の注目点
- 2026年10月30日:日本銀行の金融政策決定と四半期の展望レポート。政策金利は現在1.25%程度。
- 2026年11月3日:オーストラリア準備銀行の金融政策決定(オーストラリア東部夏時間午後2時30分)と金融政策報告。キャッシュレートは現在4.60%。
- 2026年11月20日:メルボルンでの電力供給遅延を受けたNEXTDCの年次総会と設備投資の見直し。
- 2027年初め:液冷対応を備えたSTTGDC TYO2が稼働開始予定。
- 2027年上半期:ニデックの3.2MWインロー型CDUが量産開始予定。
- 2028年半ば:AirTrunkによるとSYD3が完成予定。
よくある質問
AirTrunkはSYD3のためにいくら借り入れたのか?
42.5億豪ドル(約30億米ドル)で、2026年10月27日に32の貸し手とグリーンローンを締結した。400MWのキャンパスでは、1MW当たり約1,060万豪ドル、すなわち750万米ドルの債務となる(当社試算)。完成は2028年半ばの見込み。
日本とオーストラリアでデータセンターを建設するにはいくらかかるのか?
Cushman & Wakefieldは、中位の建設コストを日本で1MW当たり1,600万米ドル(域内最高)、オーストラリアで1,000万米ドルとしている。日本のコストは1年で20.9%、オーストラリアは3.8%上昇した。
STTGDCの東京グリーンローンとは何か?
2026年10月27日に締結された930億円のファシリティで、印西市にある70.8MWのTYO1・TYO2棟のフィットアウトと運営に充てられる。設計PUE 1.3以下が条件となっている。1米ドル=158円換算で1MW当たり約830万米ドルとなる(当社試算)。
金利はアジア太平洋のデータセンターコストにどう影響するのか?
オーストラリアのキャッシュレート4.60%では、SYD3の融資にかかる基礎金利ベースの利息は1MW当たり年間約34万5,000米ドルで、1.25%の東京の約10万4,000米ドルを上回る(マージン除く、当社試算)。日銀は10月30日、RBAは11月3日に金融政策を決定する。
出典
- AirTrunk, “AirTrunk Secures A$4.25B Green Loan For SYD3 Western Sydney Expansion”, 2026年10月27日. リンク
- STTGDC, “STTGDC secures JPY93 billion green loan to support expansion of Tokyo data centre campus”, 2026年10月27日. リンク
- Mingtiandi, “AirTrunk Secures $3B Green Loan to Expand Sydney Data Centre”, 2026年10月27日. リンク
- Mingtiandi, “STT GDC opens Greater Tokyo data centre at Goodman Business Park”. リンク
- The Next Web, “Blackstone’s AirTrunk seeks $3bn loan for one Sydney data centre”, 2026年6月18日. リンク
- Reserve Bank of Australia, “Statement by the Monetary Policy Board: Monetary Policy Decision”, 2026年9月29日. リンク
- Bank of Japan, “Change in the Guideline for Money Market Operations”, 2026年9月18日. リンク
- Bank of Japan, “Statement on Monetary Policy”, 2026年1月23日. リンク
- Cushman & Wakefield, “APAC DC market faces structural cost shift amid rising AI requirements”, 2026年4月1日. リンク
- AirTrunk, “AirTrunk secures US$2.325b green financing to support sustainable digital infrastructure growth in Malaysia”, 2026年7月29日. リンク
- AirTrunk, “AirTrunk secures largest financing for a data centre in Japan with US$1.2 billion green loan”, 2026年3月. リンク
- Nidec, “Nidec unveils NIR3.0 prototype, a 3.2MW 800VDC-compatible in-row CDU”, 2026年10月. リンク
- DC Market Insights, AI Data Center Market, Australia Data Center Infrastructure Market and Australia AI Data Center Market reports. リンク

